軒天・軒裏は、建物の機能と美観を支える重要な部位です。しかし、普段はあまり注目して見る部分ではないため、気づかぬうちに劣化や雨漏りなどのトラブルが進行しているケースも少なくありません。
軒天の役割や素材、劣化原因、修理方法、費用相場などを詳しく解説します。軒天も屋根や外壁と同じように定期的なメンテナンスが必要となりますので、ぜひご覧ください。
まず軒とは、外壁から外側に突き出している屋根部分のことを指し、この軒の裏側に張られた天井を軒天や軒裏と言います。
屋根のデザインによっては軒自体が無く、軒天が存在しないケースもあります。
外壁や窓サッシなどは雨風や雪の影響を受け続けると、建材の劣化が進行したり、劣化部分から雨水が浸入する原因となってしまいます。
軒先があることで、雨水や雪が外壁に直接当たりにくくなり、建材の保護や雨水の浸入防止に効果を発揮します。
軒天は、屋根と外壁の隙間から鳥やネズミ、蜂などが入り込まないように守る働きもしています。
小動物や害虫は気がつかなないうちに侵入していることがほとんどで、建物内部で鳥が巣を作っていたり、フンや尿で異臭を発するなどのトラブルに繋がるケースもあります。
軒天により夏場の直射日光が窓に入りにくくなるため、室内の温度上昇を和らげることが可能です。
ケイカル板は、現在最も一般的に使用されている素材です。珪藻土や水酸化カルシウムなどを原料としており、耐火性や耐水性、耐候性に優れているのが特徴です。
また比較的安価で、木質系に比べてシロアリやカビの発生リスクが少ない点もメリットとして挙げられます。
ただし、吸水性が高い素材なので、防水性を高めるために定期的なメンテナンスが必要となります。
木質系にも種類はいくつかありますが、一般的には合板やベニヤ板がよく用いられます。古い住宅で使われることが多いです。
ベニヤ板は価格が非常に安い特徴があります。合板の場合は、木目などがプリントされたシートで仕上げる方法もあり、意匠性に優れているメリットがあります。
注意点は、経年劣化で腐食や反りが出やすい点です。定期的な塗り替えや交換が欠かせません。
アルミやガルバリウム鋼板などの金属板を使用するケースもあります。軽量で耐久性・耐火性・耐水性に優れており、スタイリッシュな印象を与えることができます。
ただ、価格がやや高めで、傷やサビが発生する可能性もゼロではありません。他の素材と同じようにメンテナンス行い、劣化進行を抑えることが大切です。
屋根や外壁の隙間から浸入した雨や内部結露によって軒天材が湿気を含むと、腐食やカビ、シロアリの発生などに繋がる恐れがあります。特に木質系の軒天材は水分に弱いため、劣化が進行しやすいです。
腐食やシロアリによる被害が進むと、建物の耐震性が低下する原因となってしまうため、早急な対処が必要です。
強風や台風によって軒天に貼られている素材が剥がれたり、飛来物によって軒天が傷つくケースもあります。自然災害が起きた後は、軒天に剥がれや破損が起きていないかチェックしておくと安心です。
軒天は日光や風雨に常に晒されているため、表面に施されている塗装も徐々に劣化していきます。経年劣化が進行すると軒天を保護する機能が失われたり、防水性の低下にも繋がってしまいます。
塗膜の色褪せや軽度な汚れ程度あれば、すぐにトラブルに発展する可能性は低いですが、ひび割れや剥がれなどがみられる場合は、早めに塗り替えによるメンテナンスを実施することが重要です。
次のような症状が現れている場合は、専門業者に調査を依頼し、適切な方法で修理するようにしましょう。
・シミや黒ずみがある
・カビや苔の発生
・軒天がたわんでいる
・軒天の剥がれや釘、ビスの緩み
シミや黒ずみは、水漏れや結露の発生が疑われます。またカビや苔も、内部の湿度が高いことが理由である可能性があるため、放っておくと腐食やシロアリの発生に繋がる原因となってしまいます。
軒天のたわみは、中に水分が溜まってたり、水分によって膨れていると考えられるので、水分が建物全体に回ってしまう前に早めの対処が必要です。
軒天の剥がれや、軒天を固定している釘やビスの緩みも要注意です。内部に雨が吹き込んでしまったり、建材の落下事故に発展する危険性があります。
軒天の修理方法は劣化状態によって変わります。
また、軒天が高所に位置する場合は足場が必要になるため、ご紹介する修理内容とは別に足場代が20万円程度かかります。
塗膜の汚れや色あせ、軽度の剥がれやひび割れは、塗り替えを行います。塗装の際は汚れや古い塗膜をしっかりと洗い流し、下塗り・中塗り・上塗りと進めていきます。
軒天の塗装にかかる費用は施工面積や使用する塗料などによっても変動しますが。3万円~15万円が相場です。
軒天自体の劣化や破損が見られる場合でも、大きな損傷がなければ重ね張りが可能です。
既存の軒天を剥がさずに上から新しい建材を張るため、軒天の撤去費用や手間を抑えて修理ができます。また、軒天が二重になるので、防水性や遮音性が向上するメリットもあります。
重ね張りの費用は、施工面積や新たに使用する素材などによって変動しますが、10万円~25万円程度が相場です。
大きな割れや腐食が発生していたり、下地までダメージが及んでいるときは、軒天自体を張り替える必要があります。
既存の素材とは違うものにリニューアルしたり、雨漏りなどが起きている場合は下地の補修や補強もできるため、耐久性を復活させることが可能です。
軒天の張り替え費用は、施工面積や使用する素材、下地の状況などによって変動しますが、15万円~45万円が相場となります。
軒天(軒裏)は、建物を雨や湿気から守り、美観を維持する役割を担っています。軒天の劣化を放置していると、雨漏りやシロアリ・カビの発生などにも繋がってしまうため、定期的なメンテナンスが大切です。
また、軒天の剥がれや釘・ビスの緩みは、軒天の落下事故に発展する危険性もあるので、大きなトラブルが起こる前に対処しておく必要があります。
軒天周辺に破損や異常が見られる場合は、ぜひ弊社までご相談ください。大切なお住いを長く快適に過ごせるようにサポートさせていただきます。