防水工事は、建物の防水性を高めて雨水の浸入を防ぐ重要な工事です。防水工事を怠ると雨漏りが発生し、建物全体に大きなダメージを与えてしまいます。
また、防水層は紫外線の影響によって経年劣化していくため、防水機能を維持する為にも定期的なメンテナンスが必要となります。
今回は防水工事の必要性や工事が部位、それぞれの劣化症状、修理方法、費用相場を解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。
防水工事には次のような役割があります。建物の耐久性や耐震性を維持することにも繋がるため、欠かせない工事です。
ベランダ・バルコニーや屋上などは、紫外線や雨風の影響を受けやすい部分です。防水工事を行わないと、紫外線によって躯体の劣化が進行したり、雨が内部に浸透して建物全体に水分が回ってしまいます。
建物内部に水分や湿気が多い状態が続くと、建物を支える柱や土台などが腐食し、建物の耐震性が著しく低下する恐れがあります。
防水工事の最大の目的は、雨水の浸入を防ぐことです。雨漏りは生活に影響を与えるだけでなく、シロアリやカビの発生、建材の腐食、耐震性の低下、漏電などといった様々なトラブルを引き起こします。
また、大切な家財や思い出の品、重要な書類やデータなどが濡れてしまうと、修理費用の負担だけでなく、精神的にも大きなダメージを受けてしまいます。
雨漏りの二次被害は建物のみならず、ご自身の生活環境や健康面にも被害を及ぼすため、非常に危険な症状です。
将来的に売却や賃貸としての活用を検討している場合、建物の資産価値を維持することは非常に重要です。そして、その際に注目されるポイントが「雨漏りの有無」や「防水メンテナンスの実施」についてです。
雨漏りしていたり、防水工事を怠っていると建物の寿命が短くなるだけでなく、買い手や借り手にも良い印象を与えることができません。
定期的に適切なメンテナンスを行うことで、建物の売却価格を上げることができたり、入居者アップにも繋がります。
ベランダ・バルコニーは、紫外線や雨風の影響を受けやすい部分です。また、物を置いたり、人の歩行も多い場所と言えるため、日頃のダメージも蓄積されていきます。
ベランダ・バルコニーから雨水が浸入してしまうと、外壁から雨漏りが発生したり、建材や下地材などの劣化スピードを早める原因となります。」
■トップコートの剥がれ
防水層の表面には、仕上げとしてトップコートが塗装されています。トップコートの役割は、防水層を紫外線から保護することです。
防水層は紫外線に弱いため、トップコートを塗布することで防水層を長持ちさせることができます。トップコートの劣化を放置していると、防水層の劣化が進行する原因となるため、5年に1度を目安に塗り替えするのが望ましいです。
注意点として、トップコートには防水性を高める効果はありません。あくまでも防水層を保護するための膜なので、防水層の劣化や破損が見られる場合は、防水層自体の修理が必要となります。
■防水層のひび割れ・膨れ・剥がれ
ベランダ・バルコニーの床面にひび割れや膨れが発生している場合は、雨漏りに発展するリスクが高まるため、早めに対処することが重要です。
亀裂部分から雨が浸入したり、膨れていた部分が破れて、防水層による防水機能が失われてしまいます。また、膨れができているということは、既に内部に水分が入り込んでいる可能性もあるので、注意が必要です。
■シーリング(コーキング)の劣化
ベランダ・バルコニーと外壁の接合部や手すりを固定している部分には、隙間を埋めるためにシーリング材が充填されています。
シーリングも紫外線などの影響により経年劣化し、ひび割れや剥がれなどを引き起こすため、定期的な修理が必要不可欠です。
シーリング劣化を放っておくと劣化部分から雨水が内部に浸入し、外壁材や下地材が傷んでしまったり、雨漏りに発展する恐れがあります。
防水層の機能に問題がなく、トップコートの剥がれやひび割れが発生している程度であれば、トップコートの塗り替えで対応可能です。
ただし、防水層に破損や膨れ、剥がれが見られる場合は、防水層そのものを新しく作り直す必要があります。
シーリングの劣化が起きているときは、シーリング補修を行います。補修方法は、既存のシーリングの上から新しいシーリング材を充填する「打ち増し」と、既存のシーリングを全て撤去して、新たにシーリング材を充填する「打ち直し」の2通りあります。
【費用相場】
トップコートの塗り替え:1㎡あたり2,000~4,000円
シーリング補修:1mあたり500円~1,000円
防水層の改修工事:1㎡あたり3,000円~8,000円
テラスも屋外スペースとして使用されるため、雨漏り対策をしっかりと行うことが大切です。ベランダ・バルコニーと同じく、防水工事を怠ると、雨漏りや躯体の腐食に繋がってしまいます。
■防水層のひび割れ・膨れ・剥がれ
防水層にひび割れや膨れ、剥がれが起きている場合は、早急なメンテナンスが必要です。亀裂部分から雨水が浸入したり、防水機能の低下によって水分が下地に染み込んでしまう恐れがあります。
雨漏りによる水分や湿気は、テラスの床材を腐食させる原因にもなり、使用にも支障をきたすだけでなく、建物に影響を及ぼしてしまいます。
■雨樋の詰まり・破損
テラス屋根に設置されている雨樋に詰まりや破損、変形などが起きている場合はメンテナンスが必要です。落ち葉やゴミの詰まりによって排水ができなくなると、溜まった雨水が一気に溢れ出す可能性があります。
また、破損や変形なども排水を妨げ、思わぬところから雨水が流れだして浸水に繋がったり、泥跳ねにより周囲を汚してしまうといったトラブルに発展する恐れもあります。
■シーリング(コーキング)の劣化
テラス本体と外壁の接合部や、部材同士が隣接する取り合い部分にはシーリング材が充填されています。
シーリングには雨水の浸入を防ぐ役割がありますが、紫外線によってひび割れや剥がれなどの経年劣化が起こります。そのため、定期的にシーリングの補修を行うことが大切です。
シーリングの劣化を放置していると隙間から雨水が浸入して、下地や建材の腐食、雨漏りの発生などに繋がってしまいます。
■テラス屋根の破損・歪み
テラス屋根を設置しているの場合は、屋根の破損や歪みなどにも注意が必要です。破損や歪みは、経年劣化や強風・台風時の飛来物による衝撃、鳥が屋根をつつくなどの現象によって発生します。
屋根が破損するとテラスに雨が溜まってしまい、水分によって床材が傷んでしまう可能性があります。
防水層の劣化や破損が見られる場合は、防水層を新たに形成する必要があります。雨樋の詰まりや破損は、清掃や交換を行って改善します。
シーリングの補修方法は、既存のシーリングの上から新しいシーリング材を充填する「打ち増し」と、既存のシーリングを撤去して新しいシーリングを充填する「打ち替え」の2通りあります。
また、テラス屋根や支柱にまで破損が起きているときは、それらを新しいものに交換する工事を行います。
【費用相場】
シーリング補修:1mあたり500円~1,000円
防水層の改修工事:1㎡あたり3,000円~8,000円
屋根パネルの部分交換:1枚あたり20,000円~50,000円
屋根パネルの全体交換:50,000円~300,000円
支柱の撤去・再設置:300,000円~500,000円
笠木とは、手すりや外壁の上部を覆うように取り付けられる仕上げ材のことを指します。ベランダ・バルコニーの手すりや、屋上の立ち上がり部分など様々な箇所に設置されています。
笠木の役割は、手すりや立ち上がりの最上部から雨水が浸入しないように、建材をカバーすることです。笠木の劣化や破損が進行すると、内部に雨水が入り込んでしまう恐れがあります。
使われている素材はコンクリートや金属製が一般的で、塗装の剥がれやサビ、ひび割れなどが起きている場合は、事態が悪化する前に早めにメンテナンスすることが重要です。
■シーリング部分の劣化
笠木同士の継ぎ目や笠木と建物の接合部などには、雨水の浸入を防ぐ為にシーリングが施されています。
前述したように、シーリングは紫外線によってひび割れや剥がれを引き起こし、放置している隙間から雨水が浸入する原因となってしまいます。
さらに、浸入した雨水によって笠木内部の木材が腐食したり、外壁内部に水分が回って雨漏りに発展する可能性もあります。
■金属笠木のサビ・腐食
金属製の笠木の場合は、サビの発生に注意が必要です。笠木に傷がつくとサビが発生しやすくなり、さらに放っておくとサビが広範囲に広がっていきます。
そして、サビが深刻化すると笠木本体に穴が開いたり、建材や下地材の腐食に繋がり、笠木としての機能を果たせなくなってしまいます。
笠木に限らず、金属製の素材を使用している部分に関しては同じことが言えますので、小さなサビでも軽視せずに、早めにメンテナンスすることが重要です。
■笠木の浮き・ズレ・破損
笠木は雨風や紫外線の影響を受けやすい部分に取り付けられているため、年月の経過とともに浮きや歪みなどの経年劣化がみられるようになります。
また、強風や台風などの自然災害が発生した際に、飛んできた物が笠木に当たってズレや破損を招くケースもあります。
笠木は雨水の浸入を防ぐ為に設置されているので、浮きや破損を放置していると、やがて雨水が入り込んで雨漏りに発展したり、風が吹き込んで建材にダメージを与えてしまいます。
シーリングにひび割れや剥がれが起きている場合は、シーリング補修を行います。
補修方法は、既存のシーリングの上から新しいシーリング材を充填する「打ち増し」と、既存のシーリングを撤去して新しいシーリングを充填する「打ち替え」の2通りあります。
笠木にサビが発生している場合、症状が軽度で範囲も小さければ塗装によるメンテナンスで対応可能です。しかし、広範囲にわたってサビが起きていたり、サビによる腐食などが発生している際は、笠木本体の交換が必要になります。
また、笠木の破損や歪みが発生していたり、下地にまで劣化が進行している場合も、笠木本体の交換を行わなければなりません。
【費用相場】
塗装:1mあたり650円~1,200円
シーリング補修:1mあたり500円~1,000円
笠木の交換:1mあたり20,000円~40,000円
防水工事工法は、主にFRP防水、ウレタン防水、塩ビシート防水、アスファルト防水の4種類あります。それぞれの特徴や費用相場は、次の通りです。
FRP防水とは、FRP(繊維強化プラスチック)を応用した工法のことで、液状の不飽和ポリエステル樹脂とガラス繊維シートを組み合わせて防水層を形成していきます。
軽量かつ衝撃にも強い特徴があるため、歩行頻度の高いベランダ・バルコニーに適しています。また、液状の樹脂を使用するため、複雑な形状の場所でも施工がしやすく、さらに継ぎ目の少ない仕上がりになり、雨水の浸入リスクも最小限に抑えることが可能です。
ただし、丈夫であるがゆえに伸縮性には劣るため、木造などの収縮性がある建物や歪みが生じやすい下地には向いていません。このような場所に施工をすると、ひび割れを引き起こす可能性があります。
■FRP防水の耐用年数
10年~12年程度
■FRP防水の施工費用相場
1㎡あたり5,000円~8,000円
ウレタン防水とは、液状のウレタン樹脂を塗り重ねて防水層を形成する工法のことです。ベランダ・バルコニーや屋上など様々な場所に用いられています。
FRP防水と同じく、液状の樹脂を使用するので複雑な形状でも施工がしやすく、継ぎ目のないシームレスな仕上がりにます。さらに、ウレタン防水の場合は既存の防水層の上から塗装することができるため、メンテナンス性にも優れている特徴があります。
デメリットは、職人の技術力によって出来映えが左右される点です。ウレタン樹脂が均一に塗装されていないと、防水層本来の機能を発揮できなくなります。
■ウレタン防水の耐用年数
8年~10年程度
■ウレタン防水の施工費用相場
1㎡あたり3,000円~7,000円
塩ビシート防水は、塩化ビニル樹脂製のシートを貼り付けて防水層を形成する工法のことです。大きなシートで一度に広範囲を施工できるので、屋上や商業施設などに適しています。
塩ビシート防水は現場で防水材を塗布していく工法とは違い、既製品のシートを使って作業を進めて行くため、一定の品質を保って仕上げることが可能です。また、耐久性に優れているメリットもあります。
デメリットは、複雑な形状には施工が難しいという点です。大きなシートを施工場所に合わせてカットし、隙間ができないように貼り付ける必要があるため、施工に不備があるとシート同士の隙間から雨水が浸入する可能性が高くなります。
■シート防水の耐用年数
10年~15年程度
■シート防水の施工費用相場
1㎡あたり4,000円~7,000円
アスファルト防水とは、アスファルトを含んだシートを貼り重ねて防水層を形成する工法のことです。大型施設やビルの屋上などによく用いられています。
防水性・耐荷重性に優れており、さらに防水工法の中で最も長い歴史を持つ工法のため、実績も豊富にあるという点が大きなメリットです。
ただし、施工する際にアスファルトを熱で炙る場合があり、このときに臭いや煙が発生するデメリットがあります。火を使わずに施工できる方法もあるので、事前に業者と相談しておくと安心です。
■アスファルト防水の耐用年数
15年~20年程度
■アスファルト防水の費用相場
1㎡あたり5,000円~8,000円
防水工事が必要な部分は、ベランダ・バルコニーやテラス、笠木などです。防水工事を怠ると雨漏りに発展するため、定期的な点検とメンテナンスが重要となります。
防水工事をしっかりと行うことで、建物の耐久性や耐震性、資産価値の向上、美観の向上など様々なメリットを得ることができます。
ご自身で状況を判断するのが難しいかと思いますので、まずは専門業者に劣化具合をチェックしてもらうようにしましょう。